君にたくさんのありがとうを
1:出会いの季節



春の暖かい風が頬をかすめる4月。


気慣れた制服に身を通して、見慣れた道を歩いている。


そんな私の名前は、桜庭(さくらば) 詩織(しおり)


この春から、高校2年生になった。


クラス替えもあり、去年とは別のクラス。


1年3組から2年1組になった。


クラスには見慣れた顔が何人かいるけれど、ほとんど初めましての人ばかり。


新学期、新しい友達と……と言いたいところだけれど、私には友達がいない。


いつもひとりぼっちだ。


別にもう慣れたから、寂しいなんてことはない。


いや、嘘。


ちょっとだけ寂しい気持ちもあったりする。


机を囲んで楽しそうに話している姿が羨ましい。


学校にはスクールカーストなんて言葉があるくらい人間関係が上下している。


私はもちろん最下位。


むしろ、居てもいなくても変わらない空気のような私は、圏外かもしれない。



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