君にたくさんのありがとうを





高校2年生になってから、もうひと月と数週間が経った。


クラス替えをして、そろそろみんながクラスに馴染んで来た頃、私はまだひとりぼっちだった。


朝、食卓を囲んで朝ごはんを食べる。


まだパジャマ姿の私とは違って、お父さんはもうスーツに身を包んで新聞を広げて座っていた。



「新しいクラスはどう?もう慣れた?」



朝ごはんの目玉焼きとウインナーを乗せた皿を私の前に置いたお母さんにそう聞かれた。



「うん」



慣れたと言えば慣れた。


ひとりぼっちの生活に。



「お友達できたら遊びに連れてきなさいね?ほら、去年もだんだん遊びに行くこと減ったじゃない?心配なのよ」



何も知らないお母さんはそう言う。


知らないんだから、人の気も知らないでなんて怒るつもりもないけれど、心がチクリと痛む。



「別に、みんな部活とかアルバイトで忙しいんだよ」



気持ちを押し殺して、そう答えた。


お母さんとお父さんには心配かけないように。



「そうねぇ……それなら、詩織もバイト始めてみたら?ほら、カフェレストランの店員さんとか!」


「そんなの無理だよ」



人と関わるのが怖いのに、接客なんてやれるわけがない。


誰も、信じられない。




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