君にたくさんのありがとうを
「でも……」
「桜庭さんが自分のことを責めていたら颯馬が悲しむと思う」
「そんなこと」
「そんなことあるんだよ。どれだけ颯馬のこと見てきたと思ってるの?俺がそうって言えば絶対そう」
私よりも神代くんのことは、鎌田くんの方が知っている。
鎌田くんがそう言うのなら、そうなのかもしれない。
「だから、そんなに自分を責めないであげて」
「ありがとう、鎌田くん」
「いいって」
鎌田くんは、本当に私の家まで送り届けてくれて、その帰り道には、神代くんの話をたくさんしてくれた。
しっかりしているようでおっちょこちょいなところがあるとか、歌がとても上手いのに全然歌わないこととか、実は甘いものが大好きなんだとか。
私の知らないことをたくさん教えてくれた。
鎌田くんが面白おかしく話してくれるから、私も自然と笑みがこぼれてしまう。
「家までありがとう」
「あぁ。これで颯馬に怒られずに済むな!」
「神代くんは優しいから怒らないよ」
「意外と颯馬怒ることもあるからなー。俺、よく怒られるし」
鎌田くんはそうニカッと笑った。
「じゃあね、桜庭さん」
「また学校で」
今日は鎌田くんと少しだけ仲良くなれた気がする。
鎌田くんのおかげで心まで軽くなったような気がした。