君にたくさんのありがとうを



「神代くん、お願い、目を覚まして」



私ね、気づいちゃったんだよ。


ずっとずっと押し殺してきた自分の気持ちに。


気づいてしまったからこそ辛い。


ここ最近、ずっと神代くんのことを考えてた。


神代くんを考えなかった日なんて、一度もない。


神代くんの優しい言葉。


神代くんの眩しいくらいキラキラした笑顔。


神代くんのちょっぴり意地悪なところ。


神代くんが話しかけてくれたのがきっかけで、初めて話すのに意味のわからない予知夢を話されて、そこから少しだけ仲良くなって。


そうかと思えば、嘘の付き合っている宣言をされて。


いつの間にか登下校を一緒にするようになって。


最初はちょっと迷惑だなって思ってた。


もう静かに生きたいのに、人気者の神代くんと関わりたくないって思ってた。


それがいつの間にか、神代くんがいないと寂しいと思う自分がいて。


神代くんとまた話したいなって思う自分がいて。


どうして、こんなにも神代くんのことを思ってしまうのか……やっとわかったんだ。



「神代くんが好き」



その気づいた気持ちは初めて言葉になって、静かな病室の中で静かに響いて、静かに消えた。


聞こえるのは機械音だけ。


神代くんからの返事は無い。


その時、病室の扉をコンコンと叩いた音がした。





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