君にたくさんのありがとうを



「ずっと私が颯馬のことが好きだったのに、今まで喋ったこともなかった桜庭さんが颯馬と付き合ったって聞いて信じられなかった。颯馬は優しいから、陰口されてた桜庭さんを守る嘘だってずっと思ってた」



陽子ちゃんの仮説は概ね当たっている。


心臓がドキリとした。



「あの颯馬の発言が嘘か本当か知らないけどさ、桜庭さんが本気なら幸せにしてあげて。颯馬、私たちといるより桜庭さんといる時の方が楽しそうなんだよ」



陽子ちゃんは私のことを真っ直ぐに見て、そう言った。


さっき私が漏らしてしまった“好き”という言葉を扉越しに聞いていたのだろうか。


陽子ちゃんが部屋に入ってきたのは、そのすぐ後だったから。


だからそんなことを言うのかな。


神代くんが陽子ちゃんたちといるより私といる方が楽しそうだって、陽子ちゃんは言った。


私には客観的に見られないからわからない。


でもきっと、神代くんのことが好きだという陽子ちゃんが言うのならば、そうなのかもしれない。


本当にそうだったのなら、とても嬉しい。



「ねぇ、桜庭さんのこと私も詩織って呼んでいい?」


「へっ?」


「ほら、颯馬を好き同士、仲良くしたいじゃん?」


「ほ、本当に……?」





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