君にたくさんのありがとうを
6:夢と現実の狭間で
いつの間にか、詩織と登下校することが当たり前になっていた。
最初は迷惑そうな態度をとっていた詩織も、最近は受け入れてくれたのか隣を歩いてくれている。
俺たちの間の微妙な距離感は少なくなってきていると思う。
今日も早く来てしまったが、いつもの改札を出てくる詩織の姿はなかった。
もしかしてもう先に行ってしまった?
それともテスト期間より前の今まで通りの時間に戻ったのだろうか。
遅れてきていることを願って、改札前で詩織を待つことにした。
かれこれ待つこと30分。
電車が到着したのか、わらわらとたくさんの人が降りてくる。
スーツを着た人もいれば、私服の人、同じ制服を身にまとった人もいる。
その人ごみの中に詩織の姿を見つけた。
「おはよ、詩織」
その背中に俺は声をかけた。
「おはよ、神代くん。何か待っていたんじゃないの?」
どうやら俺の姿に詩織も気づいていたらしい。
俺が詩織を探すためにキョロキョロとしていたのを見て誰かを待っていると思ったらしいけれど、自分のことだとはこれっぽっちも思っていなかったらしい。