君にたくさんのありがとうを



それから俺たちは教室で別れて、いつも通り授業を受けた。


登下校の時以外は詩織とあまり話すことはない。


俺は圭佑たちと一緒にいることが多くて、詩織はいつものように一人ぼっちだ。


詩織に友達はいないのだろうか。


浅倉さんと笹崎さんは1年生の頃同じクラスだったと思ったんだけれど。


一緒にいるところはみたことがなかった。


授業が全て終わって、放課後。


詩織が先に帰ってしまわないよう、大急ぎで教科書類をカバンにしまった。


詩織は逃げ足が早いから。


ちょっと遅くなると置いてかれてしまう。



「詩織ー」



それから急いで詩織の元へ向かい、声をかけると、ちょうど帰る身支度が整ったところだった。


ベストタイミングだ。



「何?」


「一緒に帰ろ───」



いつも通り一緒に帰ろうと詩織を誘うところだったのに、邪魔が入った。





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