君にたくさんのありがとうを



みんなでワイワイガヤガヤと話しながら校舎の外へと出ると、雲が分厚くどんよりとした天気だった。


雲の色は明るいから、雨は降らなさそうだけれど。


それが唯一の救いだった。


今日は傘を持ってきてはいないから。


俺たちの行きつけのカラオケ屋は、学校の最寄り駅から徒歩1分のところにある。


うちの学校に通う生徒は、だいたいカラオケに行く時にはここを使っている。


ドリンクバーを利用するために廊下に出れば、必ずと言っていいほど同じ制服の人とすれ違うくらいだ。


たわいもない話をしながら、カラオケに向かっている途中のことだった。


圭佑が口を開く。



「なぁ、カラオケ行く前に寄り道して行かねぇ?」


「寄り道?どこに?」



岡田がそう問いかける。



「美味しそうな店見つけたんだよ。小腹もすいたしちょうどいいじゃん」



そんな話で盛り上がっていた。


そこで俺の中で何かが引っかかった。


頭の中でグルグルと何かが駆け巡る。





どんよりとした曇り空。


圭佑の口にした言葉───“寄り道”




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