君にたくさんのありがとうを
「ごめん、俺、ちょっと用事思い出した」
「え、ちょっ、颯馬ー!」
「颯馬っ!?」
俺を呼び止める圭佑たちを置いて、走り出した。
なんで俺は気がつかなかったのだろう。
このどんよりとした雲におおわれた天気。
圭佑の言葉。
まさにあの予知夢と同じじゃないか。
ずっといつ起こるのか怖かった。
それがよりによって今日だなんて。
せっかく詩織を守るために登下校を共にしていたというのに。
なんで俺は……
100m走を駆け抜けるように走る。
詩織は俺たちよりも先に学校を出た。
もっと先を歩いているはずだ。
夢で見た景色は、もう少し先にある大きな幹線道路。
まだそこにたどり着いていないでくれ。
俺は必死にそう願って、とにかく足を動かした。
早く。
早く、詩織の元へ。