君にたくさんのありがとうを
「しおりー!」
大きな幹線道路が見えてきた。
詩織は、反対車線の横断歩道の前に立って、信号が青になるのを待っていた。
俺は、点滅している横の横断歩道を駆け抜ける。
名前を呼んでいるのに、詩織はこちらを振り向かない。
車道側の信号が赤になり、もうすぐ歩行者信号が青になる。
詩織の元まであともう少し。
視界の端に大きなトラックが映る。
あのトラックだ。
ずっと許せなかった事故を起こすトラック。
歩行者信号が青になり、詩織は横断歩道を渡り始める。
「詩織!ダメだ!」
あと少し。
あと数センチ。
力を込めて詩織の名前を呼んだ。
行くな。
そっちへ行くな。
俺が。
俺が絶対に詩織を守る。