君にたくさんのありがとうを



俺の耳にものすごく大きなブレーキ音が響き渡った。



「詩織っ!!」



届いた。


詩織に、俺の手が。


勢いよく詩織のことを投げ飛ばす。


できるだけ遠くに。


トラックに当たらない場所に。


その瞬間、俺の体に大きな衝撃が走った。


体が……全身がものすごく痛い。


頭がぐわんぐわんと揺れる。


意識が朦朧としている中、周りから騒がしい声が聞こえる。


その中に“救急車”という言葉が聞こえた。


そんな大変なことになっているのだろうか。


自分にはわからない。


目が霞んで周りが見えない。


そうだ。


詩織は───詩織は大丈夫だろうか。



「神代くん!神代くんっ!!」



俺を呼ぶ声が聞こえた。


それは確かに大好きな詩織の声だった。




< 135 / 205 >

この作品をシェア

pagetop