君にたくさんのありがとうを
俺の耳にものすごく大きなブレーキ音が響き渡った。
「詩織っ!!」
届いた。
詩織に、俺の手が。
勢いよく詩織のことを投げ飛ばす。
できるだけ遠くに。
トラックに当たらない場所に。
その瞬間、俺の体に大きな衝撃が走った。
体が……全身がものすごく痛い。
頭がぐわんぐわんと揺れる。
意識が朦朧としている中、周りから騒がしい声が聞こえる。
その中に“救急車”という言葉が聞こえた。
そんな大変なことになっているのだろうか。
自分にはわからない。
目が霞んで周りが見えない。
そうだ。
詩織は───詩織は大丈夫だろうか。
「神代くん!神代くんっ!!」
俺を呼ぶ声が聞こえた。
それは確かに大好きな詩織の声だった。