君にたくさんのありがとうを
「し、おり……」
詩織だ。
詩織は生きている。
それだけでホッとする。
自分なんてどうだっていい。
詩織が。
詩織さえ生きててくれれば。
「おい、まだ意識はあるぞ!」
「救急車はまだか!」
遠くでそんな声が聞こえる。
他の人なんてどうでもいい。
詩織の声を聞かせて。
「ごめっ、ごめんなさいっ、神代くんっ」
微かにそんな声がする。
「謝らないで……詩織は、大丈夫?」
大丈夫。
まだ自分の口は動く。
霞んだ世界の中に、うっすらと詩織の影が見えた。
よかった。
予知夢の通りにならずに済んだ。
未来を変えることができた。