君にたくさんのありがとうを
「バカ!大丈夫だよ!私じゃなくて、自分の心配しなさいよ!」
なぜか詩織は俺を怒っている。
そんなに俺は酷い状態なんだろうか。
「お願い、死なないで、神代くん」
詩織は焦った声をしている。
俺は詩織を安心させたくて、必死に口を動かした。
「だい、じょうぶ」
だから、そんなに心配しないで。
「……あぁ、でも体が思うように、動かないや」
でも、もうそろそろ限界みたいだ。
口も思うように動かせない。
頭も全然働かない。
意識が朦朧とする。
そこでやっと気がついた。
詩織の代わりに俺がトラックに跳ねられたんだ。
だからこんなにも体が重いんだ。
詩織。
生きててくれて良かった。
願いが叶うのなら、ギュッと詩織のことを抱きしめたかった。
詩織……
俺は詩織のことが大好きだ。
今までのことが走馬灯のように頭の中を駆け巡る。
俺の言葉は詩織に届かず、そっと意識を手放した───