君にたくさんのありがとうを



真っ暗だったところがスクリーンのように白く光っている。


そこになにやら映像が映し出された。


そこは真っ白い世界だった。


俺は……寝ているのだろうか。


真っ白の正体は、天井だった。



ここは……病院?



視界の端っこに点滴が見える。


首を回して辺りを見渡すと、母親の姿が見えた。


花がさされていた花瓶の水を取り替えていた。


俺はどこかの病院に入院しているらしい。


これが夢なのか現実なのかはわからない。


水の交換がおわり、元あった場所へと戻したのと同時にドアをノックする音が聞こえた。


誰だろうか。



「あら、詩織ちゃん。今日も来てくれたのね」


「はい……」



母親は確かに詩織の名を呼んだ。


母親の背中に隠れて詩織の姿はまだ見えない。


見せてくれ。


俺に、詩織の姿を。


そう願うと母親は動いて、詩織の姿が見えた。





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