君にたくさんのありがとうを



「……っ」



そちらの方を向いていたのが悪かった。


神代くんと目が合ってしまった。


英里ちゃんといい、神代くんといい……今日はよく目が合う。



「……?」



すぐ目をそらそうとしたけれど、神代くんが何か言いたげな顔をしていて、一瞬目が離せなくなった。


一体なんだろう。


まぁ、関わってもいいことなんてないし。


深くため息をついて、視線を窓の外へと移した。


もうすぐチャイムがなる。


校門を走ってくぐる人の姿が見えた。


遅刻ギリギリ。


もっと余裕もって家を出ればいいのに。


私には関係の無いことだけれど。


走っていた人影が生徒玄関へと消えた頃、チャイムが鳴り響いた。


ふぁああと大きなあくびが出る。


なんでこんなに授業ってつまらないんだろう。


歴史好きな先生は、教科書に載っていない話を盛り込んでくる。


私は歴史を好きでも嫌いでもないけれど、そもそも興味がわかなくて、話を聞く気にもなれなかった。


ペンをクルクルと回しているとふと視線が気になった。





< 14 / 205 >

この作品をシェア

pagetop