君にたくさんのありがとうを




長い長い、夢を見た。


また真っ暗な世界に眩しい光が差し込んだ。


舞台はまた俺の病室で、また俺はひとりぼっちだった。


天気は雲ひとつない青空。


こんな日は外を歩きたくなる。


それなのに俺の体は動かなくて、ベッドの上から動けない。


首だけ回して窓越しに綺麗な青空を見た。


すると扉をノックする音が聞こえた。



「はーい」



どうせ俺の声は聞こえてはいないんだろうけれど、その扉の方に向かって返事をした。


ガラリと引き戸が開く。


そこに居たのは制服姿の詩織だった。


時計の針は午後の4時を過ぎていて、学校帰りに立ち寄ってくれたのがわかる。



「神代くん……」



今日も詩織は、俺の隣にある席に座って、俺の名前を呼ぶ。



「どうした?」



そんな俺の声はやっぱり届かずに、消えてしまう。



「今日であの事故から1週間が経ったよ」



詩織にそう言われて、もうそんなに時間が経っていたことを知った。





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