君にたくさんのありがとうを
どうやら俺はそんなに眠ってしまっているらしい。
詩織は俺の左手を掴んで握りしめる。
夢の中のはずなのに、左手がじんわりと暖かい。
詩織からの温もりを感じる。
それがとても嬉しかった。
「神代くん、お願い、目を覚まして」
「俺も早く目を覚ましたい」
そんな願いも暗闇の中へと消えていく。
俺は光の中へは行けないのだろうか。
こんなにも詩織が心配してくれているのに、もう一度抱きしめさせてさえくれないのだろうか。
詩織は目に涙を溜めていて、早くそれを拭ってあげたくなった。
それなのに、動かない体は、それさえもさせてくれない。
どうしたらいいんだよ、俺は……
暗闇に縛り付けられたままの俺は何もできない。
無力だ。
約束通り詩織を守ることができたのに、罪悪感で押しつぶされそうになっている詩織のことは守ることができない。
それじゃ、意味ないじゃないか。