君にたくさんのありがとうを



「嬉しかったよ、俺は」


「本当に?」


「本当に。俺も詩織のことが好きだから」



やっと伝えられた。


俺のずっと秘めてきた気持ちを。



「ほ、本当に?」


「本当、本当」


「信じられない……神代くんが私なんかを」



詩織は本当に信じられないという顔をしていた。


この気持ちに嘘なんかひとつもないのに。



「詩織だから好きなんだよ。詩織の笑顔を独り占めしたい。それくらい詩織のことが大好きだ」



自分でも照れくさいことを言ってしまっている自覚はある。


けれど、それ以上に今まで溜め込んできたことを伝えたかった。



「だから、俺と付き合ってくれる?」



こんな病室の中で告白するような人なんていないだろう。


しかも目覚めてすぐにだ。


それでも今すぐに伝えたかった。



「……っ」



これから答えを聞くはずだったのに。


俺の中で映像はここで途切れてしまった。





< 148 / 205 >

この作品をシェア

pagetop