君にたくさんのありがとうを
それは前の方の席の神代くんから。
朝からなんでこんなに目が合うのだろう。
私に用事がある人なんていないはずなのに。
それからも何度か目が合うことがあって、なんだか気持ちが落ち着かなかった。
放課後、「今日はどこへ行くー?」なんて言葉が飛び交う。
私には縁のない話だ。
なんの用事もない私は、誰よりも早く教室を出る。
たまには寄り道をしていかないとお母さんに心配されるだろうか。
今朝もあんなことを言われたばかりだし。
……とはいえ、1人で行くところなんてないのだけれど。
今日も教室を1番に出た。
人の少ない廊下や生徒玄関はとても落ち着く。
今日は少しだけ遠回りして帰ろうかと考えながら靴を履き替えていた時だった。
「ちょっ、早っ……待って、桜庭さん」
誰かから名前を呼ばれた。