君にたくさんのありがとうを
「……んんっ」
声がした。
それはこの世界で一番大切な、愛おしい声。
「颯馬!?」
「あれ……俺……」
「颯馬っ……!」
神代くんが目を覚ました。
神代くんがトラックに轢かれて、病院に運ばれて意識が戻らなくなってから1週間後のことだった。
神代くんが目を覚ましたのを見て、陽子ちゃんは泣き崩れた。
さっき陽子ちゃんは、神代くんを私に譲ると言ってくれたけれど、きっと今だって神代くんは陽子ちゃんの大好きな人。
無事であって欲しい、早く意識を取り戻して欲しいという願いはきっと私と一緒だった。
「神代くん……」
私の目からも大粒の涙がこぼれ落ちる。
神代くんが目を覚ましたんだ……
神代くんは無事だった。
神代くんが死んでしまったら……
神代くんがこのまま目を覚まさなかったら……
ずっとそんなことを考えていた。
ずっと張り詰めていた糸が切れた瞬間だった。