君にたくさんのありがとうを
「ナースコール押すね」
涙を袖で拭きながら、陽子ちゃんがナースコールを押してくれた。
するとすぐに看護師さんが病室まで駆けつけてくれた。
「どうしましたか?」
「神代くんがっ……」
「颯馬が目を覚ましました」
言葉に詰まって声に出せない私の代わりに、陽子ちゃんが現状を伝えてくれた。
「わかりました。すぐに先生に伝えます!」
看護師さんはそう言って先生の元へと行ってくれた。
「颯馬、私たちのことわかる?」
看護師さんを見送ってから、陽子ちゃんが神代くんに問いかけた。
「あぁ……岡田と詩織……」
「良かったっ」
陽子ちゃんは、布団越しに神代くんのことを抱きしめた。
「ほら、詩織も!」
「わっ!」
陽子ちゃんに腕を引かれて、神代くんの胸に飛び込む。
「痛ってぇなぁ……もっと優しくしろよ」
「うるさいなぁ。ずっと目を覚ますの待ってたんだから!ね、詩織」
「うんっ、うんっ」
私は何度も頷いた。
ずっとこの日を待っていた。
神代くんが目を覚ましてくれるこの日を。