君にたくさんのありがとうを
「じゃあ、私もそろそろおいとましようかな」
神代くんの両親が帰ってまもなく、そう言って陽子ちゃんが立ち上がった。
「え、岡田帰るのか?」
すぐに帰ると言い出したからか、神代くんもそう問いかける。
せっかく神代くんが目を覚ましたのだから、もう少し一緒にいたらいいのにと、私も思う。
「うん、颯馬だって詩織とゆっくり話したいでしょ?」
陽子ちゃんはニヤリと笑ってそう言った。
私にも「ねっ」と笑いかけられた。
私もゆっくり神代くんと話したい。
それはそう思うけれど、いざ2人きりされると上手く話せるかわからない。
だから、陽子ちゃんにはまだいて欲しかったのだけれど……
「あぁ。俺も詩織と一緒に話したい」
「か、神代くんっ!」
「ほらね。早く退院して学校に来てよ?颯馬がいない学校なんて楽しくないんだから」
「おう」
そうして陽子ちゃんは手をヒラヒラと振って、病室を出て行ってしまった。