君にたくさんのありがとうを
「何故か私が英里ちゃんの好きな人をバラして、その上その人に告白して奪おうとしたって……」
「あぁ。信じてたわけじゃないけど、俺のとこにもそんな噂が耳に入ったよ」
やっぱり神代くんは私の噂を知っていた。
あんなに一気に、しかも大勢に広まったんだもん。
神代くんが知らないはずがない。
「全部本当は違うのに。英里ちゃんの好きな人なんてバラしてない。告白してきたのは私じゃなくて一条くんの方で……」
「うん。俺も詩織がそんなことをするやつだとは思ってないよ」
「私ははめられたの……全部一条くんたちがやっていた賭けゲームだった」
噂が広まって、英里ちゃんと未奈ちゃんとバラバラになって数日後。
職員室に用事があってそれを済ませたあと、放課後教室に戻ると一条くんたちが集まって話していた。
「俺が振られるとかマジふざけてる」
「一条くんの彼女になんてなかなかなれないのにねー?」
「振るとかいい度胸してる」
「だから自業自得だよ。まぁ、罰ゲームなんだけどな!ははっ」
「あーあ、予想外れたなぁ……最悪。みんなにアイス奢りじゃん」
そんな声が聞こえてきて、廊下に身を潜めて泣いたことを今でも覚えている。