君にたくさんのありがとうを
「あ、そうだ、言い忘れてた」
神代くんが、ふと思い出したように言う。
「どうしたの?」
それはしんみりとしてしまった空気を変えるものだった。
そんな言い忘れることなんてあったっけと首を傾げる。
「ちゃんと俺の気持ち聞いてくれる?」
「気持ち?」
「うん、気持ち」
神代くんが私の手を握る。
神代くんと触れただけで、ドキドキする。
触れたところからドキドキが伝わってしまいそうなほど。
神代くんは真剣な顔をしてから、ふっと笑った。
「俺は、詩織のことが好き」
「……うんっ」
「だから、俺と付き合ってくれる?」
「本当に私でいいの?」