君にたくさんのありがとうを
「今日は来てくれて本当にありがとな」
「全然!良いってことよ」
神代くんの背中を鎌田くんがバシッと叩く。
神代くんは「痛っ」と愚痴をこぼしながらも、鎌田くんと笑いあっていた。
「あっ、詩織」
「……何?」
体を私の方へと向き直して、名前を呼ばれた。
「月曜日、ちゃんと駅で待ってろよ」
「月曜日、駅で?」
「あぁ。詩織はすぐ逃げるから」
「それはだってその……」
「いいだろ?本当の彼氏になったんだから」
神代くんがまた爆弾発言をする。
しかも神代くんのご両親の前で。
神代くんのお母さんなんて、「あらぁ」と口元を押さえてにこやかにこちらを見ている。
「え、やっぱり前のは嘘だったんだー」
わかってたよと言わんばかりの反応をする陽子ちゃん。
気づかなかったと驚いている鎌田くん。
「詩織を守るための嘘だったんだよ」
「ったく、カッコつけやがって」
「いいだろ?少しカッコつけたって」
「颯馬らしいな」
私たちは笑いに包まれた。