君にたくさんのありがとうを
そんなに急いで来たんだろうか。
こんなに急いでいるのにすぐ戻ってこなかったのは、友達か何かに捕まっていたのだろう。
「圭佑が離してくれなくて」
圭佑というのは、神代くんが仲良くしているグループの1人だ。
多分神代くんにとって親友と呼べるほど仲の良い友達。
「桜庭さんって電車通学?」
「……そうだけど」
「そっか、なら良かった」
何が良かったのだろう?
帰る方向が一緒だから?
それ以外に思い当たることがなかった。
「桜庭さんっていつも1人だよね」
一体神代くんは何を話しに来たんだろう。
予想がつかなくて、何となく話を聞き流していた。
学校の最寄り駅に着くまでいくつかはなしかけらたけれど、軽く頷くだけであまり会話という会話はしなかった。
……というより、する気になれなかった。