君にたくさんのありがとうを
「でさ……桜庭さんに話っていうのが」
そう切り出されたのは駅に着いてから。
どうやら、乗る電車の方向が真逆らしい。
別れ間際に本題を切り出してきた。
「……うん」
何やら真面目そうな顔をするから、聞くだけはちゃんとしようと向かい合って目を合わせた。
「もうすぐ交通事故に遭うよ」
「……え?」
意味がわからなかった。
“もうすぐ交通事故に遭う”
何回頭の中で繰り返してもわからない。
「何、言ってるの?」
「そ、そうだよな。突然こんなこと言われても困るよな」
戸惑う私と難しそうな顔をする神代くんの横をたくさんの人がすれ違っていく。
まるで私たちの空間だけ、時間が止まってしまったみたいだった。
「意味、わからないんだけど」
もうすぐって何?
未来がわかるとでも言うの?
そんなの、物語の中の話でしょう?
そう頭の中で処理しようとした矢先。
「俺、予知夢が見られるんだよね」
そう爆弾のようなカミングアウトをされた。