君にたくさんのありがとうを





それから1週間が経った。


まだ英里ちゃんと未奈ちゃんとは話せていない。


心がまだ定まっていなかった。


そんな日の帰り道。



「あ、ごめん。教室に忘れ物してきちゃった」


「一緒に取りに行こうか?」


「ううん、大丈夫!ちょっと取りに行ってくるね」



今日は体育で汗を流したから、体操着を持って帰って洗おうと思っていた。


生徒玄関に着いてからそれを思い出してしまうなんて。


神代に悪いと思いながらも、汗の染み付いた体操着を放置しておきたくなくて、取りに戻ることにした。


明日から土日を挟んでしまうから、絶対に臭くなっちゃう……


神代くんを待たせてしまっているから、ダメだと思いながらも廊下を小走りで戻った。


教室が近づいてくると、中から話し声が聞こえてきた。


まだ教室の中には誰かクラスメイトが残ってるみたい。


体操着は教室の後ろの棚にある。


さっさと取って戻ろうと思った。



「それでさ───」



その声には聞き覚えがあった。


私が教室に入ると、その声はピタリと止まる。



「……詩織」



その知っている声は、私の名前を呼んだ。





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