君にたくさんのありがとうを
「もちろん、私は断った。私は一条くんとも話したことなかったし、好きじゃなかったし……なによりも英里ちゃんが好きな人だったから」
人によっては告白されたら、お試しにって、付き合う人もいるかもしれない。
でも友達を裏切ることなんて、私にはできなかった。
それくらい英里ちゃんのことが大切だった。
「その時にね、一条くんと仲のいいグループの人たちがこっちを盗み見てるのがわかったの」
「告白現場を?」
「……そう」
英里ちゃんは口を開かない。
静かに私の話を聞いていた。
「気づいていたけど無視してその日は帰ったんだ。そしたら次の日……」
「あの噂?」
私が話し始めてから、初めて英里ちゃんが口を開いた。
「私が告白したことになってた。私が告白をして英里ちゃんを裏切っていることになってた……」
信じられなかった。
根も葉もない噂を流されて、一条くんたちはそれを見て笑っていた。
今でもあの笑顔を忘れていない。
私は絶望した。
今まで積み上げてきたものを一瞬にして壊された。