君にたくさんのありがとうを
帰り道。
「しーおり」
私の名前を呼ぶ神代くんが隣に並ぶ。
神代くんは、眩しいくらいに笑っていた。
私を呼ぶ声に、私を見て微笑む神代くんに、ドキッとする。
「先に帰るなんて酷いなぁ」
「……」
神代くんといると注目を浴びてしまうから。
みんな何も言ってこなくなったけれど、コソコソと話しているのは時々見かける。
「ほら、一緒にいないと付き合ってるの嘘だって思われちゃうよ?」
神代くんはそんなことを言う。
それは、また変な噂をされちゃうよという脅しだろうか。
もしそうだとしても、必要以上に付きまとってくる神代くんのせいだっていうのに。
「私と噂されるなんて嫌でしょ?」
「え?そんなことないよ。俺が好きでやってるんだし」
“好き”という言葉にまたドキッとした。
私に言った言葉じゃないのにね。
「ね、だから一緒に帰ろう」
神代くんに言いくるめられて、結局今日も一緒に帰ることになった。