君にたくさんのありがとうを



「俺もいろんな夢を見るんだけど、わかるんだ。どれがただの夢で、どれが予知夢なのか」


「へ、へぇ……」



やっぱり信じられない世界だ。


それって、夢の中で意思があるってことだよね。


私にはそんなことはできない。



「いつから見られるようになったの?」


「それは中学生くらいの時からかな」


「何かきっかけとかあったの?」


「……さぁ、どうだろな」



そう答えた神代くんは、どこか悲しげな表情を浮かべていた。


一瞬答えをためらった神代くん。


それがどういう意味なのか気になったけれど、それは聞けなかった。



「ありがとう、聞かせてくれて」


「うん、気になったことあったらなんでも言って?答えるから」


「うん、ありがとう」



そうこう話していると、いつもお別れをする駅に着いてしまった。


今日はなんか楽しい帰り道だった。



「じゃあ、また明日ね、詩織」


「うん、また明日」



そう行って私たちは正反対の電車へと乗り込んだ。




< 54 / 205 >

この作品をシェア

pagetop