君にたくさんのありがとうを



「ちょっと話があって」



ちょっと照れくさそうに話す一条くん。


きっとそれも演技なんだろう。


苦手な笑顔を見て、嫌気がさす。


言いたいことがあるなら早く言って欲しい。



「何?私、用事あるから早く帰りたいんだけど……」



そう言って、早く帰りたいオーラを出す。



「あっ、そっか。忙しい時にごめんね!えっと本題なんだけど」



ごめんとは言ってくれたけど、きっと本心じゃないんだろうなぁと心の中で思った。



「実は桜庭さんのことがずっと前から気になってて……よかったら付き合ってくれないかな?」



ほら、やっぱり私の予感は的中だ。


盗み見されている方から「きゃっ」という声が聞こえた。


隠れてるのか隠れてないんだか……中途半端な人たち。


そんな告白現場を見て何が楽しいんだろう。


いや、ゲームが楽しいのか。


私がなんて答えるのか、きっと期待してる。




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