君にたくさんのありがとうを
やっぱりいいと取り下げようとしたのと同時に、神代くんが口を開いた。
「今日、雨が降るよ」
「……本当に?」
それは困る。
今日は折りたたみ傘を持ってきていない。
天気予報でもそんなことは言っていなかったし、現に今の空は綺麗な青空だ。
雲ひとつない。
「嘘でしょ」
「この空を見たらそう思うよね」
神代くんが空を見上げる。
太陽に当たって眩しそうな顔をする神代くん。
キラキラした光が神代くんによく似合う。
「放課後、ちょうど帰る頃に降ってくる予定だよ」
自信満々にそう言い当てる。
私は全然信じられない。
今までのはまぐれで、今日こそは外れるんじゃないかと思う。
そんなことを思っているとは知らない神代くんは、「ほら、この通り」とカバンの中に入った折りたたみ傘を見せてくれた。
夢で見たから準備万端ってことね。
未来がわかるのは羨ましい。
だってもしその力が私にあったら……
きっとあんなこと起こらなかったはずなのに。