君にたくさんのありがとうを
「……あの、最近来るの早くない?」
「俺も早く来るって言ったじゃん!詩織と話せるからって」
そういや、そんなことを言っていたような気もするけれど。
って今なんて?
私と話せるからって言ったよね?
前もそう言ってたっけ……
気にしてなかったのかもしれないけど、これってどういう意味?
「私と話しても何も楽しいことないよ」
「そうかな?俺は楽しいけど」
「……っ」
神代くんは、不意にドキッとすることをサラッと言ってのける。
「詩織?どうかした?」
「ううん、なんでもない」
このドキドキは神代くんに気づかれないようにしないと。
神代くんに名前を呼ばれてドキドキしてるなんて知られたら……
っていうか、私ってばなんでこんなにドキドキしてるんだろ。
「帰り傘貸してあげるから、困ったら言って」
「2本持ってるの?」
「いや、1本だけだけど」
いや、言っている意味がわからない。
1本しかないのにどうやって私に貸すっていうの?
頭の中は困惑したまま、学校についてしまった。