君にたくさんのありがとうを



───放課後。


多くの生徒たちがテストを終えて、ぐっと羽を伸ばしている。


それと同時に外を見ては、嘆く声があがっていた。


あんなに晴れていたはずの空が分厚い雲に覆われ、雨が降っているのだ。


天気予報でも伝えられていなかったのだから、傘を持ってきていない人が多い。


西の空は明るくなっているから、そのうち止むのだろうけれど、もうしばらくは止まなさそうだ。



「どうしよう、傘ないんだけど」


「私もー」


「この雨止むかなぁ」



クラスメイトが話している声が聞こえる。


私もどうしようか。


そのまま帰るには強い雨が降っていて、傘がないから止むまで待つしかない。


そういえば、神代くんの数学の問題……


あれも当たってたなぁ。


ここ出るよって言われた問題が本当に出ていた。


テスト前に範囲がわかるなんてカンニングと一緒。


なんて便利な能力だろう。



「ほら、言っただろ?」



噂をすれば神代くんだ。


神代くんはいつも不意にやって来る。



「本当だね」



そう呟いて窓の外を眺める。


早く止まないだろうか。



「ねぇ、一緒に帰ろうよ」


「え?」



こんなに雨が降っているのにこの中で帰るの?




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