君にたくさんのありがとうを
生徒玄関に着いた。
やっぱり外は雨が降り続いている。
「もう少し待った方が……」
「いいんだよ、この時間の方が人少なくて歩きやすいだろ?」
そう言って靴を履き替える神代くん。
つられて私も靴を履き替えた。
先に外へ出た神代くんが持っていた傘をさす。
無地で真っ黒のシンプルな傘だった。
「ほら、おいで」
「……でも」
神代くんは傘の下でこちらを向いて手招きする。
神代くんと相合傘なんて。
イケメンな神代くんのことだ。
そこに入るのに憧れを持っている人は少なくないだろう。
「ほーらっ」
「わあっ」
1歩下がったところにいた私を引き寄せる神代くん。
勢い余って、神代くんの胸にぶつかってしまった。
「ご、ごめんっ……」
「積極的だね、詩織」
「違っ!これは神代くんが引っ張るからっ!」
「ごめん、ごめん」
謝る神代くんだったけれど、反省の色はどこにも見えない。
神代くんのバカ。
ちょっとだけ……ほんのちょっとだけドキッとしてしまった。