君にたくさんのありがとうを
しばらく歩いていると、雨が少しずつ止み始め、空が明るくなってきた。
「晴れてきたね」
「うん」
そんな会話をしてすぐに雨は綺麗に止んだ。
「傘、ありがとう」
「どういたしまして。あ、詩織、見て虹!」
雨が止んだのと同時に雲の隙間から太陽が顔を覗かせていて、その反対側に綺麗な虹がかかっていた。
「……綺麗」
それは思わず声に出してしまうほど。
とても大きな虹がかかっていた。
「俺、いつかあの虹の麓に行ってみたいんだよね」
「でも虹の麓って追いかけても行けないんじゃ……」
「そう、それがいいんだよ。夢って感じしない?」
夢は夢のままに。
それもいいのかもしれない。
私にとっては、こうして神代くんと今一緒にいることが夢のよう。
もう自分の気持ちを押し殺して気づかずにいるのは限界なのかもしれない。