君にたくさんのありがとうを
4:不思議な能力と夢
──クラスの中でも空気のような存在の彼女のことが、ずっと気になっていた。
高校2年生になり、クラス替えがあった。
俺は幸運にも、親友だった圭佑と同じクラスになることができて、少し浮かれていた。
クラスの中でも一際目立っていた岡田たちとも仲良くなり、常にグループで動くことが多かった。
いつものように教室で話していた時、ふと黒板のチョークを消していた女子に視線がいった。
あんなやつクラスにいたっけ?
それが第一印象だった。
黒板消しは日直の仕事。
そう思い出して黒板の右端を見るとそこに名前が書かれていた。
“桜庭”
これが彼女の名前だった。
それからことあるごとに彼女のことが気になっていた。
ずっと見ていると、彼女は常にひとりだった。
友達はいないのだろうか。
もしかしたらクラス替えでバラバラになってしまったのかもしれない。
もしそうだとしたら可哀想だ。
何度か声をかけてみようとしたけれど、タイミングが掴めずそれが叶うことは無かった。