君にたくさんのありがとうを
俺には誰にも言っていない秘密がある。
親友の圭佑にさえも言っていない。
俺は“予知夢”を見ることができる。
夢の中で日付が確認できればいつ起こるかわかるけれど、確認できなかった時はいつ起こるかわからない。
今見ている夢がただの夢なのか予知夢なのかは何となく夢の中でわかる。
この俺の能力が開花したのは、中学生の頃だった。
その頃、家庭内環境は最悪だった。
一人っ子だった俺は、なるべく逃げるかのように自室に潜り込んでいた。
「だいたい、アナタが悪いのよ」
「お前だって人のこと言えないだろ?」
何について言い合っているのか、俺にはわからない。
でも、喧嘩しているのは事実で、それが毎日のように続いていた。
そのうち、悪夢を見ることが増えた。
荒れた家の中。
言い合う両親。
家の片隅で怯える俺。
「もう私たち終わりね。離婚よ、離婚」
「あぁ、離婚でも何でもしろ」
その後両親は離婚してしまい、離れ離れ。
俺は父親に引き取られた。
そんな夢をもう何度見ただろうか。
心臓がバクバクと音を立てて起きることが何度もあった。
夜中だと言うのに、今日も何かを言い合っている。