君にたくさんのありがとうを
そんな矢先、聞き覚えのあるセリフが聞こえてきた。
「もう私たち終わりね。離婚よ、離婚」
「あぁ、離婚でも何でもしろ」
それは夢の中で両親が言っていたセリフだった。
嘘だと思った。
また同じ夢を見ていたのだと思った。
その日の朝、荷物をまとめている母親がいた。
「母さん……」
「ごめんね、颯馬。私もう限界なの」
いつ準備していたのだろうか。
大きなキャリーバッグにダンボールまで置いてある。
きっとずっと前から準備していた。
この日が来るのは決まっていたんだ。
「ごめんな、颯馬。俺たちは離婚することになったんだ」
昨日のことは夢じゃなかった。
俺の見ていた悪夢は、現実になってしまった。
「颯馬はずっと俺と過ごそう。その方が名字も変えずに済むし、お金だってある」
「離れるのは寂しいけれど、颯馬はきっとお父さんと一緒にいた方が幸せになれると思うの」
いつそんなことを話し合ったのだろうか。
すべて夢の通りになった。