君にたくさんのありがとうを
その日から俺は父子家庭になった。
学校ではなるべく笑顔で過ごした。
まるで何事も無かったかのように。
俺の家庭が離婚したことは、学校だけが知っていた。
この頃から“予知夢”をよく見るようになった。
最初はわからなかった。
両親の離婚のことだって、喧嘩を聞いていたストレスでそんな夢を見ていたのかもしれない。
そう思っていたけれど、ある日野良猫がトラックに跳ねられてしまう夢を見た。
嫌な夢だとしばらくは気にしていなかったのだけれど、1週間ほどした後、それが現実になった。
夢で見たのと同じ小さな白い毛並みの野良猫の姿を登校中に見つけた。
そこは車通りの多い通学路だった。
野良猫は勢いよく車道に飛び出した。
「危ない……!」
そう声に出した時にはもう遅くて、右から走ってきたトラックに跳ねられてしまった。
それから何度も夢で見たことと同じことが起こった。
何度も見る度に、これが現実に起こっていることなのだと認識するようになった。