君にたくさんのありがとうを



いろいろと予知夢を見る中で、便利だったのは学校のことだった。


今日当てられるとわかっていれば、念入りに予習をして行った。


一番便利だったのは、テストの時だった。



「ここ絶対出る!」


「まじかよ」


「嘘だったら今度アイス奢りなー!」



予知夢で見ていたから自信満々だった。


必ず出る。


だって、今日夢で見たのだから。


それが見事当たってその日から俺は一躍人気者になった。



「なぁ、今日は誰が当てられるんだ?」


「えぇ、俺かよー」



俺が的中させる度、まわりは歓喜に湧いた。


だから、俺も当時は調子に乗っていた。


両親が離婚してからも、学校生活はそこそこ楽しくて、父子家庭だというレッテルは気にならなくなっていた。


そんなある日の夜、当時の友人が飼っていた犬が夢に出てきた。


俺も何度かその友人の家に遊びに行ったことがあって、犬にも会ったことがある。


そんな可愛い犬が、寿命で息を引き取る夢だった。


この頃からもうどれが夢でどれが予知夢なのか、俺にはわかっていた。


それは、予知夢だった。




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