君にたくさんのありがとうを



桜庭さんは、そんな俺に似ていたのかもしれない。


いつもひとりぼっちだった俺に。


放っておくこともできた。


でも、ある日また見てしまったんだ。


悪夢のような予知夢を。




──桜庭さんが、死ぬ。




ある学校帰り道だった。


天気は曇り。


俺はいつものように圭佑たちと「寄り道して帰ろうぜ」なんて話しながら帰っている途中だった。


桜庭さんは俺たちのいる道とは正反対の道を歩いていた。


車側の信号が赤になり、走っていた車が止まっていく。


そうしてまもなく、歩行者側の信号が青になった。


俺たちは当たり前のように横断歩道を渡っていた。


するとものすごい音のブレーキ音が聞こえてきた。


それ同時に、ドンッという鈍い音が耳に届いてきた。


人が倒れている。


その人が桜庭さんだった。


車の信号無視で起きた交通事故だった。


俺たちは急いで駆け寄ったけれど、体から血を流し、意識もない状態で、誰かが呼んでくれた救急車に乗って行ったけれど、そのまま桜庭さんは亡くなってしまった。


そんな夢を見た朝は、ぐっしょりと汗で体が濡れていた。


随分とリアルな夢だった。


これは夢だと思いたかったけれど、間違いなくこれは予知夢だった。




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