君にたくさんのありがとうを
桜庭さんの予知夢を見たその日、俺は桜庭さんから目が離せなかった。
ずっと伝えるべきか伝えないべきか迷っていた。
また変なことを言って、クラスで孤立するのが怖かった。
でも、予知夢を見てしまった以上、そのままにもできなかった。
きっと伝えるべきだ。
そうしたらもしかしたら、最悪な事態を防げるかもしれない。
そして、何故か変な自信もあった。
桜庭さんなら受け入れてくれるかもしれないと。
「ちょっ、早っ……待って、桜庭さん」
その日の放課後、勇気をだして桜庭さんに声をかけた。
直ぐに帰ろうとしていた桜庭さんを走って追いかけてきたから、少し息が上がっていた。
「……どうしたの?」
桜庭さんは不思議そうな顔をしていた。
それもそうだろう。
同じクラスにはなったものの、今まで一度も話したことがないんだから。