君にたくさんのありがとうを



「ちょっと話したいことがあって」


「……あまり、時間ないんだけど……」



桜庭さんは警戒しているようだった。


でもどうしても伝えたかった。



「え、じゃあ帰り道に話そう!カバンとってくるからちょっとだけ待ってて」


「えっ、ちょ……」



桜庭さんの返事を待たずに急いで教室へと戻る。


もうほとんどの生徒が下校準備を始めていた。



「どこ行ってたんだよ、颯馬」


「ちょっと用事があって」


「これから岡田たちとカラオケ行こうぜって話してたんだけど、颯馬も来いよ」


「ね、うちらと行こー」



急いでいるというのに教室で圭佑たちに足止めされた。


桜庭さんのことだ。


もしかしたら、俺のことなんか待たずに帰ってしまっているかもしれない。


あの予知夢がもし今日だったとしたら……


恐ろしくなって手に汗が滲む。



「ごめん、急いでるからまた今度!」



そう言い残して、教室を飛び出した。




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