君にたくさんのありがとうを
桜庭さんは、生徒玄関の壁に寄りかかって待っていた。
しかし、その体を引き剥がして帰ろうとしてしまっていた。
早く引き止めないと。
「……桜庭さん!ごめん、遅くなった」
教室からここまで全速力で走ってきたからか、息が上がっている。
「圭佑が離してくれなくて」
申し訳ないと謝った。
桜庭さんは居心地が悪いのか、俺の少し前を歩いていた。
その後ろを俺が着いていく。
いつあの話を打ち明けようか。
すぐに話すのはあまり良くないかもしれない。
「桜庭さんって電車通学?」
「……そうだけど」
「そっか、なら良かった」
そう思って、何気ない話からすることにした。
桜庭さんは、素っ気ないながらも首を振ったりして俺の質問に答えてくれた。
「でさ……桜庭さんに話っていうのが」
そう話を切り出すことができたのは駅に着いてから。
「……うん」
俺が真剣な顔をしたからか、桜庭さんも緊張しているようだった。