君にたくさんのありがとうを
「そもそも、なんで話したことがない私が神代くんの夢に出てきたの?」
桜庭さんから、予想もしなかった答えが返ってきた。
それは俺にも不思議だった。
「それは……わからないけど」
ひとりでいた桜庭さんのことが気になっていたのは間違いなかったけれど、夢に出てくるほど親しくもなかったから。
「それで、私の予知夢を見たとして、どうしたいの?」
「守るため」
「え?」
「桜庭さんを守るために、これから一緒に帰って欲しい」
「は?」
俺もとんでもないことを言っていると思った。
そんなに親しくもないのに、突然守りたいだとか、一緒に帰りたいだとか。
でも、俺にはそれしかできないと思った。
変えられるかもしれない未来を、そのままにはできなかった。
「いや、いいよ。自分の身くらい自分で守れるし……」
「約束だから!桜庭さん、また明日!」
その日は半ば無理矢理約束させて、帰ってきてしまった。
桜庭さんにどう思われただろうか。
でも、俺は絶対に桜庭さんのことを守りたい。
それだけは意思を固く持っていた。