君にたくさんのありがとうを
「詩織がこの時間に来るなら、俺も明日から早く来ようかな」
俺の口から思わずそんな本音がこぼれた。
言ってからちょっと照れてしまう。
それでも、詩織と話がしたかった。
「え、なんで?」
「そしたら一緒に話せる時間増えるでしょ?教室だと嫌そうな顔するから」
詩織は必ず教室で話しかけると嫌な顔をする。
それは変な噂をされた日から一層強くなっていた。
俺があんな嘘をついたからか、直接何かを言われることはなくなったとは思うけれど、コソコソと何かを話しているクラスメイトもいるのは知っている。
きっとそれが嫌なんだろうけど.......
俺はそれでも詩織のことを放って置くことはできなかった。
関わりのないクラスメイトから気になる存在になり、今では俺の中で特別な存在になりつつある。
詩織の笑顔を見てみたい。
いつしか、そう思うようになった。