君にたくさんのありがとうを



「詩織がこの時間に来るなら、俺も明日から早く来ようかな」



俺の口から思わずそんな本音がこぼれた。


言ってからちょっと照れてしまう。


それでも、詩織と話がしたかった。



「え、なんで?」


「そしたら一緒に話せる時間増えるでしょ?教室だと嫌そうな顔するから」



詩織は必ず教室で話しかけると嫌な顔をする。


それは変な噂をされた日から一層強くなっていた。


俺があんな嘘をついたからか、直接何かを言われることはなくなったとは思うけれど、コソコソと何かを話しているクラスメイトもいるのは知っている。


きっとそれが嫌なんだろうけど.......


俺はそれでも詩織のことを放って置くことはできなかった。


関わりのないクラスメイトから気になる存在になり、今では俺の中で特別な存在になりつつある。


詩織の笑顔を見てみたい。


いつしか、そう思うようになった。




< 91 / 205 >

この作品をシェア

pagetop