君にたくさんのありがとうを
俺と歩くのが嫌なのか、緊張しているのか、時折詩織は傘の外へと逃げようとしていた。
「そんなに離れたら濡れちゃうよ」
背中に腕を回して、体を引き寄せる。
そうでもしないと、詩織が濡れてしまう。
その分俺の右肩が濡れてしまっていたが、そんなのはお構い無しだった。
詩織が濡れて、風邪をひいてしまう方が心配になる。
「神代くんだって肩が……!」
「いいんだよ、これくらい。それよりも詩織が濡れて風邪ひかないか心配」
そのことに詩織も気づいてしまったようだけれど、ありのままの気持ちを伝えた。
そのまま歩いていると、段々と空が明るくなり、雨が止み始めた。
「晴れてきたね」
「うん」
「傘、ありがとう」
「どういたしまして」
もうすぐ駅に着くという頃。
その頃には綺麗に雨が上がっていた。
水溜まりにうっすらと見えてきた青空が映る。
それがとても綺麗だった。