瞳の中の住人
「翼さんの葬儀が行われる少しまえに、実は事故で怪我をして。しばらく入院してたんだ……」

 そう聞いてピンときた。四十九日をすぎてもなかなか弔問にこれなかった“事情”ではないかと思った。

「なにも二ヶ月も入院していたわけじゃないんだけど。なかなか生活に慣れなくて」

「そう、だったんだ」

 怪我の具合はどの程度だったのだろう。気にはなったが、詰めて訊くのは(はばか)られる。私は彼の話に耳を傾けた。

「夏休みに入ってすぐ。俺は野鳥の写真を撮りに田舎を散策していた。今でもあの日のことを思い出すと、恐くてたまらなくなる」

 彼が夏頃の記憶を引っぱり出し、そのできごとを語ってくれた。

 その日。白石刀哉は車通りの少ない、山に面したアスファルトの道を歩いていた。

 インターネットで検索した場所で、そこまでは車で移動し、邪魔にならない所で車から降りたそうだ。

 道路からそれると針葉樹が直立して立ち並んでおり、勾配のきつい斜面になっていた。
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